フィリップ・モリス・インターナショナル(ティッカー:PM)は高配当、シーゲル銘柄、超安定のたばこ銘柄であることから多くの米国株ブロガーが所有している銘柄です。
また米国資本ですがスイスに本拠地を置くフィリップモリスはNISAで購入した場合ほとんど税金かかりません。これは日本の個人投資家にとっては非常に有難い話です。
ジョーカーも現在保有していますが気になる点は債務超過であるということです。
日本では東芝が債務超過となり大きな問題となっています。2期連続債務超過となった場合は上場廃止基準となるため死に物狂いで債務超過を解消しようとしています。しかしフィリップ・モリスは2012年からずっと債務超過の状態です。東芝が債務超過で大騒ぎなのにフィリップ・モリスは大丈夫なのか?と心配になるかと思います。今回は府lリップモリスの財務を書きたいと思います。
債務超過とは
債務超過とは財務諸表のバランスシート(以下、BS)の状態で負債総額が資産を上回っている状態をいいます。黒字企業は税引き後の利益を配当として株主に還元し残った金額を純資産に積み上げます。(負債を削減)。逆に赤字の企業は純資産を減らしていきます。
経営状態が悪い企業は純資産が薄く、負債が大きくなります。すると支払利息、返済負担が大きくなり倒産リスクが高まります。
ちなみに債務超過=倒産ではありません。負債の返済ができなくなった時に倒産となります。債務超過でも仕入先への支払いや借入の返済のために新たに株式を発行したり借換えを行うことで滞りなく支払いができれば事業活動を継続することができます。
フィリップ・モリスが債務超過になった理由
ではフィリップ・モリスは赤字企業かと言えば違います。リーマンショック時を含む過去10年間で一度も赤字となったことはありません。下のグラフは過去10年間の売上と利益、利益率の推移です。見た目の通り超安定しています。
粗利は60%超、営業利益率でも40%前後を常に維持しています。これはフィリップ・モリスが「堀」で守られている証明になります。たばこ産業は寡占事業であり競合は少ない。また規制も厳しく新規参入がほぼない。健康に悪いと分かっているが、たばこはやめられない人が大勢いる。このような理由からフィリップ・モリスは「堀」に守られており今後も利益を稼ぎ続けると思います。
これで売上が伸びていれば言うことないのですが・・・。
なぜこんな優良企業が債務超過になったのでしょうか。その理由は「自社株買い」です。
「自社株買い」は企業が稼いだ資金で自社株を買い戻す行為です。自社株買いを行った場合バランス・シートの資産にある現預金と純資産が減少します。
つまりフィリップモリスの債務超過の原因は稼いだキャッシュで自社株買いをしまくった結果だということです。赤字という消極的な理由で債務超過になったわけではありません。
過去10年間のバランスシートの推移(総資産を100としてパーセント表示)とインタレスト・カバレッジ・レシオの推移を載せます。
しかしプロセスはどうであれ債務超過は債務超過であり倒産リスクは高まっている事実はかわりません。それでも大丈夫というのは何を見れば分かるでしょうか。
その一つの指標がインタレスト・カバレッジ・レシオです。
インタレスト・カバレッジ・レシオは、財務分析上の指標の一つ。 インタレスト・カバレッジ・レシオは、金融費用に対する事業利益(営業利益と受取利息・受取配当金の合計)の比率をいう。 主に、企業の安全性分析に用いられる。 損益計算書上の数値から企業の利子支払能力を測ることができるところに、その特色がある。
このインタレスト・カバレッジ・レシオですができれば10倍以上ほしいところです。直近の数値で12.59なので一応問題ない水準ですね。しかし今後米国の金利が上昇した場合、企業の支払利息負担が増加します。仮に支払い利息が2倍になればフィリップ・モリスのインタレスト・カバレッジ・レシオは10を下回る水準になります(赤字にはならないですけどね)。負債が大きい企業は金利上昇に対して弱くなるので注意が必要です。
ちなみに財務優等生のジョンソン・エンド・ジョンソン(ティッカー:JNJ)のインタレスト・カバレッジ・レシオは19.92とやはり優れています。業績が落ち込んでいる百貨店大手メーシーズ(ティッカー:M)は3.48と危険水域です。
競合他社のインタレスト・カバレッジ・レシオを比較
アルトリア・グループ(ティッカー:MO)とブリティッシュ・アメリカン・タバコ(ティッカー:BTI)にフィリップ・モリスを加えた3銘柄でインタレスト・カバレッジ・レシオの推移を比較します。
*MOとBTIは2017年のデータがなく2016年までの比較です。
この中で債務超過はフィリップ・モリスのみでありアルトリアとブリティッシュ・アメリカン・タバコは資産超過の状態です。3銘柄を比較してもフィリップ・モリスが競合他社に劣っているとは見えません。しっかりと負債を管理できています。
結論
フィリップ・モリスの債務超過について書いてきました。結論は債務超過でも問題ないということです。支払い能力がある企業は債務超過であっても問題ありません。現在の負債水準では競合と比較しても劣っていることはなく今後も維持できる水準です。
債務超過ということでビビることはないでしょう。