今回はコカ・コーラ(ティッカー:KO)を調査します。
事業内容は皆さんご存知の通りコカ・コーラを中心にノンアルコール飲料を中心に販売しています。
最近では日本で酎ハイの販売を行うとの発表がありアルコール市場へも参入しようとしています。
年間売上10億ドル以上売り上げるブランドを多数有しています。
Our Billion-Dollar Brands: The Coca-Cola Companyより
売上及び利益構成
売上構成
過去3年のセグメント別売上推移です。ボトリング事業の減収により総売上は15.4%の減収となっています。これは北米のボトリング事業リストラによるものです。
コカ・コーラは北米のボトリング事業を再フランチャイズ化を進めています。ボトリング事業とは原液を薄めて飲料を製造、消費者に届ける事業です。この事業は製造設備の更新や物流コストなどが発生します。こちらは付加価値が低い事業なので分離しようとしています。
米国コカ・コーラ本社はボトリング事業以外の企画、研究開発、マーケティングといった付加価値が高い分野に集中することで利益率を高める戦略をとっています。
コカ・コーラシステムについて: The Coca-Cola Companyより
営業利益の構成
営業利益も再フランチャイズ化の影響で減益です。ボトリング事業では再フランチャイズ化に伴う費用負担が大きく11億ドルの赤字となっています。
再フランチャイズ化の影響を除いた業績について
コカ・コーラの業績は再フランチャイズ化の影響が大きく減収減益です。これだけ見れば業績いいのか悪いのか分かりません。本来のコカ・コーラの事業の推移を見てみます。
2017年の売上は全体で15%の減収です。しかし為替の要因と再フランチャイズの影響を除けば3%の増収となります。
2017年の営業利益は全体で13%の減益でした。こちらも為替及び再フランチャイズの影響を除けば4%の減益となります。
直近3期の売上・営業利益の推移(Non-GAAP)
Non-GAAP(正式な会計ルールではない)の売上及び営業利益の推移です。再フランチャイズ化の影響により営業利益率が高まっています。今後、増益となるかが問題です。
財務データについて
過去10年間のPL推移
最近は減収及び減益傾向です。再フランチャイズ化により本当に収益力が高まるかをしっかり見極める必要があります。
しかし利益率は高く一定しており素晴らしいです。
株式数、1株利益、配当、FCFの推移
株式数は自社株買いにより減少傾向です。コカ・コーラの配当は55年連続増配であり右肩上がりです。しかし1株利益、FCFの状況からみるとかなりぎりぎりの水準です。
税制改革の影響があり2017年のEPSは0.29となっています。しかしNon-GAAPベースの2017年EPSは1.91ドルと前年Non-GAAPベースの1.91ドルと同じです。
営業CF、FCF、売上高FCF比率の推移
キャッシュフローも減少傾向です。売上高FCFは一定水準を維持しています。
インタレストカバレッジレシオ、ROE、ROICの推移
インタレストカバレッジレシオの水準が近年低下しています。収益力の低下及び借入の増加によるものだと考えられます。
ROICも低下傾向にあり注意が必要です。
過去10年間のBS推移(パーセント表示)
<資産の部>
2017年は再フランチャイズの影響で有形固定資産を売却しています。一部売却が決定しているが決済されていない物件があるようでその他流動資産に計上されています。
その他固定資産の増加はアフリカのボトラー企業「CCBA」の買収によるものです。CCBAはバドワイザーで有名なアンハイザー・ブッシュ・インベブから購入したものです。
<負債及び純資産の部>
借入金の増加が気になります。最近米国企業は低金利環境下で借入を増加させる企業が多いようです。
結論
コカ・コーラは世界中でビジネスを展開しておりブランドを生かして高い利益率をあげる素晴らしい企業です。しかし、再フランチャイズ化による影響を見極める必要があると考えます。
2018年の通期見込みはオーガニックの売上増加が4%、為替及び構造的な要因を除いた修正後営業利益の増加を8-9%としています。
(2017年のオーガニック売上は3%増加、修正後営業利益4%減少)
また2018年通期のEPS見通しは2017年修正後EPS1.91ドルに対して8-10%の増加としています。
(2017年の修正後EPSは前年と同額の1.91でした。)
直近の業績は正直パッとしません。今はまだ「保有」です。